フェスから始まる、マチづくりー BRAHMAN、太陽族、細美武士も出演した南相馬「騎馬武者ロックフェス」レポート大増補WEB版

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昨年秋に福島県南相馬市で開催された「騎馬武者ロックフェス」。企画立ち上げから関わってきた、ピースオンアース事務局長の南兵衛@鈴木幸一によるレポート(大増補WEB版)です。
南相馬に行った人、行けなかった人、行くことに違和感を持つ人など、みなさんに読んでいただきたいと思います。

以下、アースガーデンWEBより引用掲載。
http://www.earth-garden.jp/study/40154/



福島第一原発がある福島県双相地方で初めての野外音楽フェス「南相馬 騎馬武者ロックフェス」が昨秋9月20日、2000人を超える人々が集って開催されました。放射能と津波の被害に向き合い続ける街で、自分たちの街と子ども達のために集い、全国各地からも人々が集ったこのフェスに、僕たちが見たその姿と未来への物語を伝えます。
フリーペーパー版に写真文章とも大量追加の、増補WEB版です!

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“福島第一原発に一番近い街”、南相馬で初めての野外音楽フェス

素晴らしかった、太陽族、BRAHMAN、THE BACK HORN、細美武士などの多くの出演者、そして南相馬で集ったみんな。

参加したアーティスト達のパフォーマンスは、それぞれに熱く大きなエネルギーを発していました。子ども達のためにと1年がかりで花火募金160万円を集めてきた太陽族の情熱、南相馬に寄り添い続ける細美武士のやさしさ、実行委員会メンバーからの粘り強い願いを受け止め叱咤激励しながら見守ってくれたTOSHI-LOWとBRAHMAN。このフェスに参加する事のハードルと、参加するからにはの想いが、この街に生きる人たちの唯一無二のエネルギーとぶつかり合い、時に抱擁し合うような、一瞬一瞬のライブが生き交ったフェスティバルでした。

また、会場となった雲雀ヶ原祭場地の広大な野原も贅沢で素晴らしく、数百年の歴史の中で守られてきた伝統の場を使える幸せと、この土地の可能性を参加者みんなが実感する1日に充実は、この記事の写真の一枚一枚からも、強く伝わるのではないでしょうか。

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南相馬という街の困難とチャンス、問われているのは僕たちひとり一人

このフェスが開催される5日前に、通行止めとなっていた国道6号線が開通しました。原発から最短で2kmほどの距離を通るその道の放射能数値は高く、おおむね0.5マイクロ以下、一部では5マイクロ超の放射線を確認しながらの道筋です。

東京から4時間ほどに時間短縮されたとは言え、JR鉄道の復旧がない中で公共交通は福島仙台1.5時間のバスのみ、さらにこうした放射線や第一原発の存在による精神的健康的な抵抗感もあって、南相馬のフェスに参加するというハードルはアーティストにも地域外からの参加者にも、低くはありませんでした。
そしてそれは、実行委員会と街の人々のためらいや迷いにもつながります。当然、準備は遅れがちでスケジュールはギリギリに、メイン出演者発表は開催1ヶ月に間に合いませんでした。

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それでも、細美武士もBRAHMANも南相馬だからこそ参加してくれました。僕たちにとって日本にとって、避けては通れない課題を抱えて先頭で踏ん張っている街だと、彼らも共有してくれているからでしょう。そう、放射能も原発も、地方という問題も、南相馬は僕たち日本の課題をそのエッジで先に立って受け止めてくれているとも言えるのです。

もちろん南相馬に住む人々にとってこの課題は、もっとリアルに切実ではあります。仮に放射線の問題を大丈夫だと割り切れたとしても、同じ市内南部の小高地区はいまだ1万人が帰宅できず、津波の被害や浪江などの近隣からの避難者仮設住宅などの課題も共有しています。第一原発についても新しい問題が次々と伝わってくる中で、この地域の人々の切迫感は小さくありません。

しかしそうしたある種のピンチに向き合い続ける街でのフェスだからこそ、集まった一人一人の気持ちが、大きなエネルギーとなったとも思うのです。

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20人のボランティアの輪で参加したPeace On Earthとアースガーデンが、できたこと。そしてこれから、できること

こうした場づくりに僕たちは、震災以来の市民の場づくりを続けてきた「Peace On Earth」として、そして「アースガーデン」として、さらにはバンド「TEX & Sun Flower Seed」として、20人にもなったボランティアの輪で参加しました。

こんなに多くのみんなが参加してくれるというのは、このフェスの立ち上げから見守ってきた僕自身の予想も超えた嬉しいことで、アースガーデンの場づくりでも福島支援活動への募金などを続け、このWEBでも報告してきた中でボランティアとスタッフの皆に共有されてきたエネルギーを実感する大きな機会でした。

実際の場づくりで僕たちが担ったのは、駐車場の誘導や受付、前日の設営と美術の準備などの裏方作業でしたが、南相馬という小さな街の大きな出来事に関わることは、大きな喜びと充実感がありました。その実感があったから、南相馬の仲間たちとのやり取りは濃密に続いていて、the HIATUS武道館公演で一緒にブースを作ったり、アースガーデン有志ボランティアで南相馬の仮設住宅での餅つき企画をお手伝いにいったりと、様々な場が生まれています。

2015年3月7ー8日11日に開催を予定している日比谷公園での「311東日本大震災 市民のつどい Peace On Earth」でも、南相馬と福島そして東北各地のフェスにつながりお手伝いしていく企画を準備中です。

この記事に何か感じてくれたなら、ぜひ皆さんも南相馬とのつながりの輪に加わってください。Peace On Earth/アースガーデンでは随時さまざまな企画でその入口をつくっています。
→ ピースオンアースWEB http://peaceonearth.jp/

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311震災から3年半のフェス開催、そしてさらに震災5年目を迎える南相馬

震災後の東北では、震災復興を掲げた数え切れないイベントと、野外音楽フェスが生まれました。僕たちがお手伝いした「南相馬ダイアログ」も対話“イベント”ではありました。そこから、南相馬での子ども達の遊び場づくりを中心にした市民プロジェクト「みんな共和国」が始まり、さらに大きな費用調達も必要だった夏の水遊び場「じゃぶじゃぶ池」への挑戦にも協力。結果的にその動きは「街づくり」へと広がっていきました。

そんな先で、開催準備の立ち上げから関わってきたこのフェスの準備は、上に書いた南相馬の課題の中で、とてもナイーブに色々な現実に向かい合い、一つ一つ解きほぐし、新しい時代の僕たちの課題を共有していく作業でした。このフェスに2000人が集まったからといって、放射能の問題は解決したわけではなく、健康被害についても様々な情報が生き交い、その評価はまだまだ定まっていません。

実行委員スタッフ達にしても、出演者にしても「安全、大丈夫」と確信をもって口にする人はいません。むしろそうした不安や懸念をより丁寧に一緒に確認していくためにこそ、南相馬に新しい人々に来て欲しいと願っているというのが、南相馬にかかわってきた僕の実感です。

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フェスから始まる、マチづくり

ポスト311へ僕たちのリメイクデザイン

宮城岩手の沿岸被災地では既に言われているように、震災復興の実質はすでに息長い「マチづくり」へと移ってきていて、それはこの南相馬でも同じです。
今回、若者たちが組織もなく遮二無二で頑張った場づくりに、最終的には桜井市長も参加され、地域の人々の協力で騎馬武者ロックの名に相応しい伝統の姿も垣間見えました。一方で未だ帰還できない浪江、小高地区出身の顔ぶれがフェス実行委員会の主要メンバーに入っています。

それは結果的にフェスティバルとマチづくりの、リメイクデザインへとつながることなのだと思えます。野外フェスを仕事として15年以上、常々フェスというのは2ー3日の村づくりのようなものだと思ってきました。その延長上で、こうしてマチづくりという課題に向き合うのは、当然のことなのかもしれません。

もちろん、騎馬武者ロックフェスは南相馬の人々が主役であり、僕たちひとり1人が向き合う“マチづくり」はまたそれぞれの場所にあるわけですが、地方と地域がこれだけ社会的な課題として取り上げられ、誰もに切実な時代になってきた今、南相馬という場がその学びのきっかけだと思うと、このフェスへの関わりがさらに有意義なことに思えます。

開催から4ヶ月が過ぎ、今年2015年の開催へあと半年+αの時期に来ました。会場は変わらないとしても、日程決定に人の輪づくり、資金づくり、出演者への相談まで、これからまた開催への道筋は平坦ではなく2年目だからこその難しさも顔を出しているように感じます。それは南相馬のマチづくりにこそ密接なことで、このフェスの開催が南相馬という街そのものにどんな影響をあたえ、人の輪の触媒になっていくのか、しっかり手伝い見守っていきたいと思うのです。

なのでこの物語はまだまだ先に続きます。

南相馬や僕たちのコミュニティで、もっともっと豊かな物語が育つことを願って、ひとまずのご報告とさせて下さい。

騎馬武者ロックフェス
http://www.kibamusha.com/

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本記事のタイトルについて

本記事のタイトル「フェスから始まる、マチづくり」は、僕の友人達の勉強会のタイトルを、敬意をもって意訳拝借しました。

「フェスからハジメルまちづくり@仙台Forsta」
https://www.facebook.com/events/1439684842952339/

すでに各地で、こうした意識でのフェス作りが広がっています。僕たちの繋がりをもっと広げチカラをつけ、知恵やお手伝いを必要としている地域と仲間たちに役に立てるように、もっともっと成長したいと願っています。

合わせて読みたい

音楽に励まされ前に進む人々と、寄り添い続ける人々と、
空と緑と音楽と花火と「南相馬 騎馬武者ロックフェス」
http://www.earth-garden.jp/study/40006/

南相馬でフェスを開催!太陽族の花男が語る
「ROAD to 南相馬 みんなで花火をあげよう」
http://www.earth-garden.jp/culture/33955/

津波以上の勢いで、この困難を乗り越えていく。
南相馬桜井市長と住民が語る「これからの南相馬」
http://www.earth-garden.jp/study/21724/

アースガーデン代表南兵衛が見てきた「フクシマが、日本を救う!
福島と、市民社会と、僕たちの毎日」
http://www.earth-garden.jp/study/16534/

命の使いどころを探してた。the HIATUSの細美武士が語る
「自分の内面にある善と悪」
http://www.earth-garden.jp/study/39160/

TOSHI-LOWと島キクジロウが語る
「311のあと、価値観が変わってなければ負けだと思う」
http://www.earth-garden.jp/study/15401/

おまけライブレポート

この長い、音楽とフェスティバルと福島と僕たちをめぐるレポートにお付き合いいただき、ありがとうございます。最後にちょっとだけ、当日のライブの様子もお伝えしますね。

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フェスのオープニングは細美武士、そしてなんと朝10時スタート。

宮城沿岸の被災地フェスとのダブルヘッダーのスケジュールを承知で出演を決めてくれた細美くん、なんと朝イチ10時のオープニングでの登場。と書くとなんでもないように感じますが、公共交通機関のない南相馬、福島市からもいわき市からも2時間コースのこのフェスに朝のこの時間に辿り着くハードルは決して低くはありません。そこに駆けつけたこれだけの数の参加者に、もう最初から感動でした。

そしてそこに、BRAHMANのTOSHI-LOWくんが駆けつけ飛び入り、さらにまったく打ち合わせなしでステージ袖で見守っていたブルーハーツの梶さんを呼び込んで、ぶっつけであの歌。

南相馬という場だからこそ生まれた音楽ファン冥利に尽きるひと時でした。

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そして、穏やかな秋晴れの青空の下、多彩なバンドが次々と出演、レポート本文の写真にあるように、老若男女ファミリーまでが自然につどう、まさに街のフェスティバルと言うべき姿が繰り広げられました。

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太陽も西に沈み、ステージの照明が光り輝くころ、いよいよBRAHMANの登場。

実行委員会のメンバー達のみんなが、どんなバンドよりもまず出て欲しいと願い、出演の実現のためにがんばったBRAHMAN。ステージ前はこの日の最大の観客で埋まり、スタート前には緊張感ただよう、まさに“固唾を呑んで見守る”雰囲気の中でライブがスタート。

バンドの演奏と同時に弾かれたように激しく上下するステージ前のモッシュは、僕がこれまで見てきたどんな大規模フェスにも負けない激しさがあり、集まった2000人の皆からステージ上に注がれる気持ちの真剣さも相まって、観客の数では計れない大きなエネルギーの渦が巻く本番でした。

TOSHI-LOWのMCも、震災直後のゴーストタウンと化した南相馬の姿から今目の前に集まる数千人の姿を踏まえて「ありえねえ!」を連発しながら、このフェスと南相馬という街の奇跡を讃える感動的な内容でした。

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ちなみにBRAHMANの出番の直前には、代々木公園でのアースガーデンでお馴染みの我らがTEX & Sun Flower Seedも2ndステージのトリで登場、沢山の南相馬市民を踊らせ喝采を浴びていました。彼らも前日から会場入りしボランティアとして準備にも参加したのでした。

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そして、大トリは太陽族。

このフェスの言い出しっぺの1人であり、自分たちのライブでこのフェスで花火を上げるために1年以上かけて160万円を集め、さらに忙しいライブの合間に南相馬でのミーティングにも参加し、必要に応じて東京での相談やお願いにも動き、主催者同然で南相馬の仲間たちに寄り添い続けました。

そんな彼ら太陽族のファンは数多く、ステージ前はパンパンでライブはスタート。

泥臭い心情や頑張る気持ちをストレートに歌い上げるボーカル花男くんの声、それを一丸になって支えるバンドのメンバー達。ステージ前の熱さも、BRAHMANに勝るとも劣らず、その演奏は最後まで清々しく駆け抜け、地元の幼稚園の子ども達も共演しての1曲のあと、子ども達と一緒にステージ上から花火を見届けるラスト。

その場にいた誰もが来年もここに帰ってこよう、このフェスをまた実現させようと心に誓う、感動的なフィナーレでした!

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オマケです。皆さんまた今年も会いましょう!

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(文/写真:南兵衛@鈴木幸一)